樹に触れ、森を知る

森で間ばつ、枝打ち体験

「ギコギコ、ギコギコ」。静まりかえった森にのこぎりの音が響きわたる。やがて伐られた枝が落ちる。この繰り返しを枝打ちと呼ぶのだと、筆者は初めて知った。

11月23日、亀岡市宮前(みやざき)町神崎で「キノコの森・森林の楽校」が開催された。主催は「JUON・NETWORK(樹恩ネットワーク)」(以下樹恩)。樹恩は東京を拠点とするNPO法人で、全国各地で都市と農村漁村をつなげる体験プログラムを計画・実施している。筆者は今回、年齢も出身地もさまざまな参加者とともに活動に加わった。

午前中には間伐を体験した。間伐とは、木の生育を助けるために育ちの良くない木を伐ってすき間(ギャップ)を生みだすこと。地表にまで差しこむ光は下草などの生育をも助け、災害に強い環境が形成される。フィールドの近くには、台風でなぎ倒された木々があった。その多くは放置林だ。木を伐るにもロープを引いて木を倒すにも、間伐では参加者が息を合わせることが不可欠。慣れない斜面の移動に足をとられながらも、作業は終始和気あいあいと行われた。

午後には枝打ちを体験した。午前中は陽光が秋の里山を美しく照らし出していたが、午後になると陽は次第に傾き、底冷えのする暗い森の中での作業となった。向日市から家族で活動に参加した澤山宗吾くん(14) は「枝打ちをするのが珍しくて楽しかった」と微笑んだ。

枝打ちをしている参加者= 11 月23 日・14 時 筆者撮影

作業後の交流会では、食べ物をつまみながら、一人ずつ活動に参加した理由を話した。災害の爪あとの残る森のそばで談笑に花を咲かせる参加者。焚き火の火花が、暗闇の中で昼間の紅葉のように煌めいていた。秋の美しい里山の風景も、団らんする老若男女の姿も、決して自然に生まれたものではなかった。この景観が自然に見えているとすれば、それは薄暗い森で地道な作業を続ける人々のおかげなのだ。

樹恩の活動は、大学生協の呼びかけで阪神・淡路大震災の支援活動をしたことに始まる。今回参加者を指導してくれたスタッフにも、学生時代から活動に参加しているという人が少なくない。だから、豊かな自然を守るのは特別なだれかではない。私たち一人ひとりなのだ。一歩、足を外に向けてみる。そうすれば、喜びのさえずりも、悲しみの叫びも、私たちの耳に届くだろう。

帰りの車のなかで、樹恩の山邑和裕さんは「森で活動をしていると、季節の変化や、自然災害の厳しさがよく分かる。だからこそ、一人でも多くの人に来てもらいたい」と語った。森は私たちの訪れを待っている。

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▼JUON・NETWORKの公式サイト

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