バリスタ 笹田俊彰 (Takaaki Sasada)

今回は、バリスタの笹田峻彰氏に話を伺った。バリスタとはコーヒーの専門家のことで、笹田氏は出町柳にあるLIGHT UP COFFEE KYOTOのマネージャーとしてコーヒーの魅力を伝えている。彼らが扱うのはスペシャルティコーヒー(SC)と呼ばれる高品質な豆だ。SCは美味しいということに留まらず、実は、様々な社会問題と密接に関わっている。例えば豆を購入する際、従来の安価な買い叩きとは異なり、SCに認定されるような優れた豆を今後も持続的に確保することを目指し、生産者に適切な価値還元がされており、生産者とのより良い関係性を築いている。このように社会的側面も持ち合わせているのもSCの魅力だ。

笹田氏の活動の根底には、自分の作ったもの、自分にしかできないことで人の心を豊かにしたいという思いがある。学生時代には製菓やプログラミングを通してその思いを実現しようと試みたが、作ったものの背景が見えない事、自分の個性が発揮されないことに思い悩んだ。そんな時、作り手が客の反応を直に感じながら仕事のできるバリスタという職に出会い、笹田氏はその道へ進む決心をした。その後バリスタとしての技術を高め、現在では、コーヒーを軸としたトークイベントやコミュニティ制作等も企画実行している。笹田氏はコーヒーを通して個性に巡り合った、と言って良いだろう。

商品を提供するものがどれだけ思想や哲学を持っていても、商品のクオリティが高く無いと受け手の心に響かない。ただ、これからの時代それだけでは力不足だと笹田氏は指摘する。文脈のないものをただ提供するのではなく、コンテンツに付加価値を加えていかなければならない。そして、今も昔も変わらず、受け手がどう捉えるのかを知り、受け入れることが大切だ。笹田氏はコーヒーを中心とした多様な手段を用いて、これを多角的に捉えようとしている。

現代の日本は、多様な生き方を求められる難しい時代にある。しかし同時に、それが実現できる時代でもある。やりたいことが見つからないのは勿体無い。自分を見つめ、様々な事に取り組むことが大切だ。自分の理想像を胸に、これと現実を照らし合わせて生きること。笹田氏の生き方は、その大切さを教えてくれる。

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笹田俊彰さん

大学在学中、スペシャルティコーヒーに出会いバリスタの道へ。コーヒーをきっかけにして温かな想いが広がっていけるように、関西を中心にさまざまなイベントを開催する。『2nd BREWERS TOURNAMENT 2018』にて優勝。

普段は、LIGHT UP COFFEE KYOTO マネージャーとしてコーヒーの魅力を伝えている。